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Supabaseで作るハイブリッド検索

更新: 11/6
読了: 約16
字数: 6,195文字
Supabaseで作るハイブリッド検索

はじめに

近年、検索システムは単なるキーワードマッチから「意味」を捉えるベクトル検索へと進化しています。しかし、ベクトル検索だけでは正確なキーワード一致やファクト確認が不足することがあり、企業システムやナレッジベースではハイブリッド検索(ベクトル検索+キーワード検索)の採用が急増しています。本記事では、特にSupabaseを中心にしたハイブリッド検索の設計思想、実装手順、n8nなどのワークフロー連携、評価方法、運用のベストプラクティスを、ITリスキリングを目指すエンジニアやプロダクト担当者向けに詳しく解説します。

ここで扱う内容は以下です。

  • Supabaseによるベクトル格納と全文検索の組み合わせ方法
  • n8nやNext.jsを用いた実践的ワークフロー
  • ハイブリッドスコアリングとフォールバック戦略
  • 実運用での課題と解決アプローチ

本記事は技術的な実装手順と、すぐに試せる具体例を重視しています。公式ドキュメント(https://supabase.com/docs/guides/ai/hybrid-search)...

Supabaseで始めるハイブリッド検索の基礎設計

ハイブリッド検索の目的は、意味検索(semantic/ベクトル)とキーワード検索(sparse/全文検索)の利点を統合し、欠点を補完することです。一般的なアーキテクチャは次の通りです。

  • ドキュメント格納:PostgreSQL(Supabase)に原文を保存し、メタデータとFragment IDを付与する。
  • 埋め込み生成:OpenAIや他の埋め込みモデルでベクトルを生成し、pgvector等で格納。
  • 検索実行:まずベクトル類似度で候補を取得し、必要に応じてキーワード検索で補完する(ベクトル優先・ハイブリッド・キーワードオンリーの選択)。
  • スコア統合:ベクトルスコアとキーワード一致スコアを正規化してハイブリッドスコアを算出、上位を返す。

SupabaseはPostgreSQLベースのため、pgvectorのような拡張を用いたベクトル検索と、全文検索(pg_trgmやpg_search)を同じDBで扱える利点があります。これによりデータ一貫性、運用の簡便性、コスト面での優位があります。

ベクトル優先とフォールバック戦略の設計

ハイブリッドには運用ごとにいくつかのモードがあります。実務では以下が有用です。

  • ベクトル優先モード(本番推奨): まずベクトル類似度で候補を引き、一定の閾値を満たさなければキーワード検索でフォールバックする。
  • ハイブリッドモード(開発/検証向け): ベクトルとキーワードを並列に走らせ、両方の結果を統合する。
  • キーワードオンリーモード: 既存システムとの互換性を保つためのフォールバック。

フォールバックは単純な「ベクトルがない→キーワード」ではなく、類似度が低い場合やファクトレベルの確認が必要な場合に適用するのが肝です。スコアの正規化、重み付け(例: ベクトル0.7、キーワード0.3)を実験で決めましょう。

Fragment IDとSchema.orgを活用した引用最適化

検索結果やRAG(Retrieval-Augmented Generation)で回答を生成する際、Fragment ID(例: article#section-3)を付与しておくと、LLMやAI検索エンジンが正確に出典を示せます。さらにSchema.orgのproperty(potentialActionやsameAs)を活用して構造化データを提供すると、外部AIが引用しやすくなり信頼性が向上します。Mike King理論に準拠したレリバンス設計も、得られるクリックやリテンションに良い影響を与えます。

実践的な応用例:n8nと組み合わせたRAGワークフロー

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n8nやZapierのようなワークフロー自動化ツールを使うと、Supabaseでのハイブリッド検索を自動化してAIエージェントや社内ツールに組み込めます。Ala KhadriやThe AI Automatorsの動画では、Supabase+n8nでハイブリッドRAGを構築する手順が紹介されています。ここでは実務向けの具体的なフローを示します。

  1. ユーザーのクエリを受け取る(Webフォーム、Slack、メールなど)。
  2. クエリをエンコードして埋め込みを生成(OpenAI等)。
  3. Supabaseに対してベクトル検索(近傍取得)とキーワード検索を並列実行。
  4. スコアを統合して上位N件を取得。
  5. 取得したドキュメントをソース付きでLLMに渡し、回答を生成。
  6. 回答と出典(Fragment ID)を返す。

n8nを使えばステップ2〜5をノーコード/ローコードで実装でき、エラー処理やログ保存、メトリクス収集も容易です。また、ワークフロー内で「コンテキストボーナス」や「キーワード一致ボーナス」を適用してスコア調整することも可能です。

実装方法:Supabase+n8nの具体ステップ

手順1: Supabaseプロジェクト作成とテーブル設計

  • documentsテーブルにid, title, content, metadata, fragment_id, embedding(vector)などを設ける。
  • pgvectorを有効化し、embeddingカラムにインデックスを張る(approximate index推奨)。

手順2: 埋め込み生成パイプライン

  • OpenAI等の埋め込みAPIを呼び出し、文章ごとにベクトルを生成。
  • 生成したベクトルをSupabaseにINSERT/UPDATEする。

手順3: n8nでクエリ処理ワークフロー作成

  • 「Webhook」ノードでクエリを受け、埋め込みノードでベクトルを生成。
  • 「HTTP Request」ノードでSupabaseのRPCやSQLを呼び出し、ベクトル検索とキーワード検索を実行。
  • 「Function」ノードでスコアを統合して上位結果を選出。
  • LLM生成ノードに渡してRAG回答を生成。

手順4: ロギングと評価

  • 返答ごとにクリック/利用率/正答率をログし、閾値や重みをチューニング。

ベストプラクティス:信頼できる出力のために

  • 出典(Fragment ID)を常に付ける。LLMの hallucination を防ぐために重要。
  • スコア正規化は行列的にテストする。ベクトルとキーワードの分布はデータセットで大きく異なる。
  • レイテンシを考慮して近似検索(HNSWなど)を導入。
  • セキュリティ: 機密データは埋め込み前にフィルタ処理し、APIトークンの管理を徹底する。

2024年以降、オンプレ/クラウド問わずPostgreSQLベースにベクトル検索を組み込む事例が増えています。これは既存DB資産を活かしつつ、新しい検索体験を短期間で導入できるためです。Dave EbbelaarのPostgreSQLハイブリッド検索のチュートリアルや多くのGitHubレポジトリが示す通り、pgvectorやTimescale(時系列要素)を組み合わせた柔軟な設計が現場で支持されています。

成功事例:ナレッジベース検索の改善

あるSaaS企業は、FAQ検索での回答精度が60%台から90%近くに改善しました。手法は以下。

  • 既存FAQをセクションごとに分割しFragment IDを付与。
  • 各セクションのembeddingを生成してSupabaseに格納。
  • ユーザークエリでハイブリッド検索を行い、LLMに最小限のソースを渡す設計。

このアプローチで、「あいまい検索」や「固有名詞の取りこぼし」が大幅に減少しました。スコア統合はベクトル優先で、キーワードは補完として機能させる方式が功を奏しました。

  • 埋め込みモデルの多様化(タスク特化モデル、ドメイン固有モデル)
  • ハイブリッド検索とリランキング(Reranking)を組み合わせたマルチステージ検索
  • Schema.orgやFragment IDを使った構造化出力でAI引用を最適化

これらはAI検索最適化(AI SEO)にも直結します。構造化データを含めることで、チャット型AIや代理検索エンジンに対する露出が向上します。

課題と解決アプローチ:信頼性・スケーラビリティ・評価

ハイブリッド検索導入で直面する主な課題とその解決案を挙げます。

  1. 検索精度のばらつき
  • 課題: ベクトルモデルは文脈を捉えるが、固有名詞や日付などのファクトに弱い。
  • 解決: キーワードマッチを補完として使い、ファクト検証を行う。ハイブリッドスコアでキーワード一致ボーナスを付与する。
  1. レイテンシとコスト
  • 課題: ベクトル検索や外部埋め込みAPIのコストと時間。
  • 解決: 埋め込みはバッチ処理で前処理し、近似検索(HNSW)を導入。キャッシュとFragment IDで同一クエリの再処理を削減する。
  1. モデルアップデート時の不整合
  • 課題: 埋め込みモデルを差し替えると既存ベクトルが無効化されるリスク。
  • 解決: バージョン管理を行い、古いベクトルと新ベクトルを並列運用。徐々に移行するフェーズドローリングを採用する。
  1. 出典とトラストレベル
  • 課題: LLMが誤情報を生成する(hallucination)。
  • 解決: Fragment IDとSchema.orgの構造化データを必須で返し、出典提示とClick-Recoveryレイヤーを導入して人間のレビューを可能にする。

これらの施策は、Mike King理論に基づくレリバンスエンジニアリングやTrust Layer統合で効果が高いことが報告されています。

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よくある質問

Q: Supabaseでハイブリッド検索を始めるための最短ルートは?

A: 最短ルートは、(1) Supabaseプロジェクトを作成、(2) documentsテーブルにcontentとembeddingカラムを追加、(3) OpenAI等で埋め込みを生成してINSERT、(4) ベクトル検索(pgvector)と全文検索を組み合わせるクエリを作ることです。まずは小さなデータセットで検証しましょう。

Q: ベクトルとキーワードのスコア統合はどう設計すべき?

A: 正規化した上で重み付け(例: ベクトル0.7、キーワード0.3)を適用します。閾値を設け、ベクトルが十分でない場合にキーワードを優先するフォールバックを導入すると安定します。A/Bテストで最適値を見つけてください。

Q: n8nとSupabaseを連携する際の注意点は?

A: n8nからSupabaseへはRPCやREST APIを使います。認証情報はn8nのCredentialで安全に管理し、埋め込み生成APIのレート制限やエラーハンドリングをワークフローに組み込むことが重要です。

Q: Fragment IDはどの粒度で作るべきですか?

A: ユーザーが参照しやすい最小単位(例: 段落またはセクション単位)でFragment IDを付与します。セマンティック引用やLLMの出典表示を考えると、1セクション=1Fragmentが実務上使いやすいです。

Q: 埋め込みモデルの選定基準は?

A: 汎用性の高いOpenAI系モデル、業務特化のベクトルモデル、もしくは自社データでファインチューニングしたモデルの3パターンがあります。コスト、精度、応答速度を比較し、ドメインごとに選定してください。

Q: ハイブリッド検索のパフォーマンスを測る指標は?

A: 精度(Precision/Recall)、上位N精度(NDCG)、ユーザー満足度、応答レイテンシ、コスト/クエリが基本です。RAGでは「出典の正確性」も重要指標になります。

Q: 大規模データを扱う際のスケール戦略は?

A: インデックス(HNSW等)を導入し、ベクトル検索を近似で高速化します。データ分割・シャーディングやキャッシュ層、Batch埋め込み生成でスループットを確保してください。

Q: ハイブリッド検索でよくある失敗と回避策は?

A: よくある失敗はベクトルのみ依存してファクト誤りを許すことです。回避策は必ずキーワードマッチや出典提示を組み合わせること、スコアの調整と継続的な評価を行うことです。

まとめ

Supabaseを中心としたハイブリッド検索は、既存のPostgreSQL資産を活かしつつ意味検索の利便性を取り入れるための現実的で強力な選択肢です。本記事では設計原則、実装手順、n8nとの統合、スコア統合の方法、運用上の注意点、業界トレンドと成功事例を具体的に解説しました。

実務で成功させるためのキーポイントは以下です。

  • Fragment IDと構造化データで信頼性を高める。
  • ベクトル優先+キーワードフォールバックを基本戦略とする。
  • スコア正規化と重み付けをA/Bテストで最適化する。
  • ロギングと評価指標を整備し継続改善を行う。

まずは小規模なPoCから始め、ユーザー行動を計測しつつ段階的に本番移行することを推奨します。Supabaseのハイブリッド検索ドキュメントを参考に、実際のプロダクトで信頼できるRAG体験を構築してください。

次のアクション:

  1. Supabaseプロジェクトを作成して小さなデータセットでPoCを構築。
  2. n8nでワークフローを作り、ベクトル+キーワード検索を実行。
  3. ロギング/評価を実装し、スコア重みをチューニングする。

これらを進めることで、ハイブリッド検索を活かした実用的なAI検索・RAGシステムを短期間で導入できます。


📚 関連情報

  1. よくある質問: AI技術について
  2. サービス詳細: AIエージェント開発
  3. 企業情報: NANDS について
  4. FAQ: システム開発について
  5. AI-Site: 24時間365日無人営業マン

著者について

原田賢治

原田賢治

代表取締役・AI技術責任者

Mike King理論に基づくレリバンスエンジニアリング専門家。生成AI検索最適化、ChatGPT・Perplexity対応のGEO実装、企業向けAI研修を手がける。 15年以上のAI・システム開発経験を持ち、全国で企業のDX・AI活用、退職代行サービスを支援。